TOI 孤独の番人


くらい、くらいへや…だわん。

さびしいわん。



だけど、ここにいなきゃいけない、きがする…わん。










「おや…ほほほ」



 ワシは久しぶりにケルベロスの元へ訪れてみた。

 あの子は広い天上に造られた小さな部屋で、たった一人きり――首は3つあるがの――で、あの場所を動くことも出来ず、訪れるものは何人も追い払わねばならぬ。
 ワシは広い天上の中心にある天空城にて、アスラの世話をしている。サクヤと、ラティオから亡命してきおったイナンナの、小うるさいケンカに耳を傾けていられる。空を自由に飛びまわり、天上の様子――平和だったり、戦で黒ずんでいたり――を見物することが出来る。
 あの子はアスラより、イナンナより、サクヤより、ワシなんかより…天上一かも知れぬくらい、ずっと、孤独。
 だから、こうしてワシが定期的に覗いてやっている。孤独に満ちた、暗い部屋を。
 最初こそそっけない態度で追い返されたりもしたものだが、最近は挨拶くらい返ってくるようにはなった。ワシはそれで満足であった。年寄りには少しでも優しくしておいた方がよい。

 アスラに昔話を聞かせてやったおかげで、暫くは戦場にて我が子を背に乗せ兵を蹴散らす日々が続いておった。
 ケルベロスは、頑なな態度こそとってはいるが、本当はあの広く暗い部屋で寂しさに苦しんでおるだろう。どれだけの日を空けておったかは把握できんが、またワシを拒絶するかも知れん。
 それでもわしは、久しぶりにケルベロスの元へ訪れてみた。

 そうしたら…どうだろう、これは。



「すっかり小さくなって。転生したばかりだったかえ。かわええ子よのお」

「わ…わん! バカにするなわん!」



 ケルベロスはすっかり、小さな黒い犬っころになっておった。
 創世力の番人ケルベロス…と今名乗っても、この姿じゃ誰も信じまいて。番人、と言う響きが恐ろしく似合わんからのお。ケルベロスである証拠は唯一、それぞれ表情が違う3つ首ぐらいか。……ほほ、もしやアスラはこのケルベロスに会うたのか?ならば本来の威厳を教えなおしてやらんといかんな。
 しかし、威厳も、知識も、何もかもやり直しになって、幼くなってはいてもやはり、こやつは今までどおりのケルベロスであった。ワシは、そう思った。



「転生を繰り返してもなおこの場を離れられぬとは…さぞ辛かろうて」



 憐れんでやると、こやつは拗ねおる。
 自分に憐れまれる謂われはないと、自身に言い聞かせておるのだ。―――これは運命。決して自分は不幸などではない。誇れる役職であり、一生なのだ……とな。
 しかし、どうしても憐れの気持ちは芽生えてしまうのだ。年寄りとはそういうものなのだろうな。

 原始の巨人の涙、創世力。
 ワシの息子は、こやつが全世をかけて守るそれを欲しておった。



「……お前が課した試練、もうすぐ終わるやも知れぬぞ」

「何となくわかる、わん。でも創世力渡す、嫌…わん」



 じゃれる、出来なくなるわん、と、3つ首が悲しそうに目を伏せた。
 こやつ、まだまだ幼い所もあるようだ。威厳を取り戻すのはもう少し先…?



「よいではないか。創世力を用い天地の統一を果たせば、番人の役も終わるじゃろうて」



 巨人の願い―――世界の平和。友愛。
 それが叶えられれば恐らく、創世力は消えるであろう。番人も要らなくなる。次の転生ではこやつもきっと、自由を手にするものに生まれ変わる。
 わん、と納得したくないように、ケルベロスは呟いた。創世力を持っていかれることは使命を果たせぬこと…であるから? しかし、それで世界が平和になるならそれもいいだろうに。信頼を持つことが出来ないのかのう。



「孤独、なくなるわん?」

「そうとも。天空城で暮らすか?」



 ケルベロスは黙った。夢は見たくないのじゃろうて。見たら、叶わぬときに辛すぎるからのお。
 …さて、そろそろ戻らねばならん。アスラの軍議の合間に覗きにきただけじゃからな。ワシも戦に出ねばならん。天上統一の、ひいては天地統一の為の戦争に。



「…では、戻るとしようかえ。アスラが来たらよろしく頼むぞ」



 ワシは、ケルベロスに背を向け、部屋の小さな入り口から飛び立った。










ヴリトラは、もうすぐ、ばんにんのやくはおわる、といったわん。

ほんとうわん?

うれしいわん。

ここからでれなかったわん。ここからうごけなかったわん。だれともあえなかったわん。

そとへ、でれるわん。

さんぽが、できるわん。

おはなしが、できるわん。



たくさんのヤツをたおした、わん。

やいばをむけてこなかったヤツもいたわん。

ちからで、ことをおさめようとするヤツじゃない、わん。

いいヤツだわん。



へいわになったら、ボクはきえる、わん?

やくめがなくなったら、きえる、わん?

それとも、じゆうになる、わん?

てんせいして、じゆうになる、わん?



ヤツは、そうせいりょくを、ちゃんとつかえるわん?



わんわんわんわん。















…じゃが、平和はもう少し先の話になってしもうたのじゃ。










少なくとも、神々はすべてその平和な世を見れぬことになった。




…なんだか意味が分からない話になってしまいました(’’
とりあえずヴリトラとケルちゃんのほのぼのが書きたかったんです!
始まりも終わりもぐだぐだなのはどうか目を瞑ってくださいorz
そして口調もある程度見逃してください。。。