TOA 存在


イオンって ひとが いた

シンクって ひとが いた




でも それは昔のこと





それなのに。











「……もうヤダ」


ばさっ


 書類が机に落ちる
 限界まで引かれたカーテンが 揺れていた
 けれど、ここまでは届かない
 頬に触れることも無く、風は消える


「そんな事言わないの、ほらっ」


 いつのまにかいる ひと


「導師がちゃんとお仕事しないと、教団はやってけないんだからね」


 苦笑
 その表情(かお)は、僕のもの


「前導師は、…ちゃんと、こなせた量、なんだから……」


 笑顔
 その表情(かお)は

 …誰のもの?


「…ぜん、どうし?」


 分かってないようで 分かってる


 笑顔
 その表情(かお)は


「…うん、イオン様っていう人」


 僕じゃない ひとのもの


 …けれど 僕のもの?






 ときどき

 垣間見えた


「……ほらっ、がんばれがんばれ」


 複雑な 心境


「おやつ、持ってきたからさっ」
「えっ、おやつ!!」


 無意識に 輝く目
 すると
 見えなくなる

 その人の 心境



 はぐらかしたって 見えてしまっていた



 僕を見て、誰かを思い出す

 そんな人は この世界には


 たくさん。



 無垢を見て 導師を思い出す

 導師を見て 烈風を思い出す

 烈風を見て 無垢を思い出す



 僕は ぼくである


 でも 僕は
 そもそも


「僕」という 存在なのかな。



 兄弟でもないのに
 面影を 見出される人達の所為で

 それを、思う。




ねえ。



ぼくは だれ?






フローリアンだって、レプリカ関連にはうすうす気がついているとは思うんです。
ダアトでは、少なからずイオン様の噂は流れていると思いますからね。
だから、もし『イオン様』というのが自分と瓜二つな存在だと知ったら、兄弟でもないのに、何で? と疑問に思うかなー、と。
いくらやんちゃな子供でも、そういう事は未熟な知識で一生懸命考えるのではないでしょうか?