『どくん』


 目を開けたら、そこは黄泉の国だと思っていたのに。

 先にいるのは、共に死んだ彼女ではなく、灰色の髪の生者だった。

「目が覚めたか」


『どくん』


 聞こえるはずのない音が体中に響く。

 音の根源には、血のように紅く光る魔導器。

「心臓魔導器の心地はどうだ」


『どくん』


 既に自分の身体にはないはずの器官が、人工物で再生されたと言うのか。

(そんなことするくらいなら)

「お前は私の道具として生きるのだ」

(いっそ死なせてくれれば)

 涙が流れた頬に、何の感情も伝わらない拳が飛ぶ。

「道具に意思も感情も必要ない」


『どくん』


 自分は、この人の望みの為に、望まない生を受けたのか。




(あのまま死ねたら、黄泉の国で彼女と楽しく暮らせただろうに)



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シュヴァーン復活の瞬間。