大型の魔物の爪とぶつかり合った瞬間、情けない音がした。


(あらら、折れちゃった)


 とっさに小刀で巨体を押し返すも、重圧に負けて折れた弓は直らない。でも、戦闘は続く。

 腹をくくって、弓の残骸を捨てて小刀一本利き手に持ち直し、駆け出そうとする。

 その足元、前方数十センチのところに突如、細身の長剣が地面を抉って突き刺さった。

 危うく足を抉るところだったその剣が飛んできた方には、別の剣を装備しなおしている青年の姿。


(使えるだろ、って?)


 ちらりとこちらを見てきた闇色の瞳は、何故だかそう言っているように感じられて。

 好意に甘えて、目の前の長剣を小刀の代わりに持つ。別段違和感は無かった。普通に、騎士団で採用されていそうな長剣の手触り。

 でもその手触りは、自分に様々な場面を思い起こさせた。


(皮肉な武器使わせてくれちゃって)


 青年に悪意はない。ただ、夕焼け色の隊長服に身を包んだ彼に代わりの武器を渡しただけなのだ。





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おっさんは実は3つ武器を使えるんだよ、という話。いや、短剣だって剣だけど。
時間軸的には当然、皆に洗いざらいばれた後です。