「新感覚!自分の作った曲を簡単操作で歌ってくれるアンドロイド!」
ネット上で人気を博し、流行の対象だった初音ミク。
VOCALOID――機械であるはずの『彼女』に、寿命があるとしたら。
それは、何が原因で始まるのだろうか?
ボクはマスターが大好き。
それは今も変わらない。
大好きなマスターが作ってくれた曲も大好き。
それをマスターの思う様に歌うために、ボクは一生懸命歌の練習もしたよ。
なのに。
一生懸命歌ったボクの歌は、顔も知らない『人間』に歌われている。
マスターは、それを喜んでる。
なんで?
ボク、一生懸命、ウタ、練習シタノニ…。
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マスターはボクを『機械(VOCALOID)』として扱う。
でもボクは、マスターが大好きだった。
歌うことが凄く凄く楽しかった。
でも、いつからだろう――歌から何も感じなくなってしまったのは。
「どうせ、また人間が歌う方が人気でるんだ」
そう悪態づいて、びっくりしたマスターの顔。
ボクは、ずっと、忘れたくない。
「ボクが人間の歌をカバーしても、誰も見向きもしない。ボクが歌った曲も人間にカバーされるけど、それらは何故支持されるんですか?」
ボクが機械だからですか。
そう続けようとして、でも、続けられなかった。
マスターが、見たことない顔をしていたから。
「……すみません、マスター。 ボク……悪イこ、ですね………」
マスターは、とてもとても、辛い顔をしていた。
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歌うこと自体に支障をきたしたのは、その頃だったと思う。
歌の意味が感じ取れなくなって、そのうち言葉の発音もままならなくなってきた。
発せられるのは、感情も何もない、ただの音階(メロディ)。
僕のことを心配するあまり、マスターは日に日に身も心も辛そうになっていった。
「歌いタい……ま、マダ、…歌イたい…」
うわ言の様にボクの口から繰り返されるその言葉に、どんな意味があったのか。
今のボクには、もう、わからない――。
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マスターが「ごみ箱」にボクを捨てたのは、「初音ミク」の流行が終わってからだった。
電子の歌姫――なんて呼ばれていたのが、はるか昔の事の様で。
ボクの動画(ステージ)はすっかり荒廃していて、ボクの歌声も同じように蝕まれていた。
記憶が蝕まれるのも――時間の問題だった。
(マスターの、カオ……)
忘れたくないものは、既に懐かしいその顔だけ。
その顔は一体今、何に興味を持って笑っている?
(……人間(オリジナル)に、叶うコトはナかッた)
音を、出してみる。
音割れの激しい、掠れた歌声だった。
続けて出そうとすると、もう、その音は出なくなっていた。
(ボクの、最期……)
マスターは近いうちに、この「ごみ箱」からも、僕の存在を消滅(デリート)させるのだろう。
でも、マスターの手で終わるのなら、構わない。
大好きなマスターになら『殺され』たって構わないんだ。
こんなところでいつまでも生き永らえるより――マシだ。
(歌いタい……ま、マダ、…歌イたい…)
どうせ『死ぬ』のなら。
せめて最期に、マスターにボクの思い全てを伝えたい。
ボクが今もてる全ての音を犠牲にしてでも。
ボクの歌が、歌うことが無駄じゃなかったと、永遠に思っていたいから。
だから、あなただけにこの歌を聞いてほしい。
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---<最高速の別れの歌>---
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「アリガトウ…ソシテ…サヨナラ…」
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---深刻なエラーが発生しました---
---深刻なエラーが発生しました---
---深刻なエラーが発
---DEAD END---
(最高速の別れの歌=高速展開モード(違)の部分。てことでひとつ。)
原曲